海外赴任の方必見!納税管理人と確定申告パーフェクトガイド。

この記事を読んでいただいている方は、会社から海外赴任を命ぜられて、しばらく
日本を離れる予定の方かもしれません。ご家族も一緒に渡航する場合は、現在の持家を賃貸に出そうとお考えの方もいらっしゃるでしょう。日本から1年以上の予定で離れる方が、その間に日本で生じた所得については、確定申告を行う義務があります。確定申告のたびに日本に帰国するといったことは現実的ではないので、日本から離れている間は「納税管理人」を選任し、税金関係の事務をお願いすることとなります。以下の記事をお読みいただいて、安心して海外での生活をお送りいただければ幸いです。

納税管理人とは、どういった場合に選任する必要があるのでしょうか?

納税管理人とは、確定申告書の提出や税金の納付・還付などの手続きを、非居住者に代わって行う人のことをいいます。あなたが1年以上の予定で日本を離れる場合には、出国の翌日から所得税法上の非居住者に区分されることになります(詳しくは居住者・非居住者の判定についての記事をご参照ください)。非居住者の所得のうち、日本国内で発生した所得については引き続き確定申告を行う必要があるため、場合によっては納税管理人を選定する必要が出てくるのです。

例えば海外赴任中に持家を賃貸にだすケースでは、貸家の賃貸料などの不動産所得が一定以上ある場合は、毎年確定申告を行う義務があります。このようなケースでは、出国の日までに納税管理人を定めておく必要があります。

さて、上記で「所得が一定以上」とご説明しましたが、具体的にはどのくらいの所得なのかが気になるポイントかと思います。

海外赴任をする際に、納税管理人を選任して確定申告を行う必要がある人

・出国した年
日本国内で給与所得以外の所得が20万円以上ある方

・海外赴任中
日本国内で給与所得以外の所得が38万円以上ある方

まずは、あなたの海外赴任中に、日本での確定申告義務があるかどうかをチェックすることが第一ステップとなることをご理解いただければ幸いです。

納税管理人の選任届出は、どこに提出すればいいのでしょうか?

納税管理人を選任したときは、その非居住者の納税地を所轄する税務署に(通常ですと、出国の直前まで居住していた住所地を管轄する税務署になります)、納税管理人の選任届けを提出する必要があります。この選任届けを出すことによって、その後は税務署からの通知や書類は選任した納税管理人宛に発送されることになります。ご注意いただきたいのは、納税管理人の居住地ではなく、あくまで非居住者(納税義務者)ご自身の納税地を管轄する税務署に提出する必要があるということです。

では、以下のようなケースはどうなるでしょうか?

Aさんは、海外赴任を命ぜられるまではX市にある持家に家族で住んでいました。またAさんは、X市にある持家以外にも、以前から投資用のアパートをY市に保有していました。したがって、アパートの不動産所得については、毎年Y市を管轄する税務署に確定申告を行っていました。
このたび、Aさんは家族同伴で米国へ赴任することとなり、X市の持家も賃貸に出す予定です。この場合、納税管理人の選任届けはX市とY市のどちらを管轄する税務署に提出すればいいのでしょうか?

Answer
上記のケースでは、もともとアパートを保有していたY市を管轄する税務署宛に、納税管理人の選任届けを提出することとなります。(所法15五)

なお納税管理人は誰になってもらえばいいのだろう?と思われる方もいるでしょう。これについては、日本の居住者であれば誰でも問題ありません。通常ですと、日本に残る家族や親戚に頼むケースが多く、また所属する会社にお願いするケースや税理士に依頼する場合もあります。税理士に依頼した場合は、確定申告も同時に頼むことができますが、報酬が発生してくることとなります。(納税管理人は、有償でも無償でも依頼することが可能です。ただし確定申告書の作成を納税義務者本人がするのではなく、他人に依頼したいという場合は、税理士に依頼する必要があります。)

海外赴任中に賃貸をする予定の持家については、青色申告ができますか?

非居住者が国内に保有する不動産にかかる所得についても、居住者と同様に青色申告を行うことができます。ただし不動産所得については、事業的規模の賃貸以外は青色申告の65万円控除は適用できませんので、単にこれまで住んでいた持家を賃貸に出すようなケースでは、10万円控除の適用のみ受けることとなります。なお損失の繰越は可能ですので、海外赴任中に修繕を行う予定である方や、減価償却費が大きい物件に関しては、青色申告を行うことをおすすめいたします。

青色申告の申請期限については、青色申告を行おうとする年の3月15日までに、あらかじめ「青色申告の承認申請書」を所轄税務署まで提出する必要があります。なお新たに賃貸を開始するようなケースでは、賃貸を開始した日から2ヶ月以内が承認申請書の提出期限となります。

納税管理人の選任を忘れた場合はどうなりますか?

さて、非居住者となったあとも日本での所得がある方については、「出国の日までに」納税管理人を選任しますと上記でご説明いたしました。しかし、海外赴任の辞令から出国の日までバタバタで、納税管理人の選任を失念・あるいは頼めないまま出国してしまうケースも中にはあるでしょう。

納税管理人を出国の日までに選任した場合は、確定申告期限は通常の場合と同じで翌年3月15日になります。しかし納税管理人を出国の日までに選任しなかった場合には、確定申告期限が以下のようになります。

Example(準確定申告)

・2017年3月15日までに出国した場合
2016年分・2017年分の所得を出国の日までに確定申告を行う必要があります

・2017年3月16日以降に出国した場合
2017年分の所得を出国の日までに確定申告を行う必要があります

なお、海外に出発する日まで生じた所得が勤務先の給与のみであるある場合は、勤務先において年末調整が行われるので、確定申告(準確定申告)をする必要はありません。

注意いただきたいのは、上記のとおり出国の日までに確定申告書を提出したとしても、その年の1月1日から出国する日までの間に生じた全ての所得、および出国した日の翌日からその年の12月31日までの間に生じた国内源泉所得をあわせて、再び翌3月15日までに確定申告をする必要があります。二度手間を避けるためにも、給与以外の所得がある方は、出国の日までに納税管理人を選任しておくのを忘れないようにしましょう。

固定資産税や住民税など、地方税についての納税管理人は必要ですか?

これまでは所得税(国税)についてのお話でしたが、勘の良い方は、持家の固定資産税はどうなるのだろう?と思われるかもしれません。

日本に持家や保有する不動産を残したまま出国し非居住者となる場合は、固定資産税の納税管理人を選任する必要があります。所得税とは別途、不動産の所在する市区町村に納税管理人の選任の届出が必要になりますので、忘れずに手続きを行いましょう。

また住民税についても同様です。住民税は1月1日に日本国内に住所がある人に対して、前年の所得に基づいて課される税金となります。普通徴収といって自分で納付することを選択している方については、翌年6月頃に納税通知書が郵送されてきます。納税管理人を指定した場合は、この通知が納税管理人宛に送られてくることになります。

なお住民税について納税管理人を置かない場合は、出国の日までに全ての住民税を納付しておく必要があります。例えば、2017年3月に出国するようなケースでは、出国の日までに2016年分と2017年分の全てを納付する必要があります。いずれにせよ、1月1日の住所がある市区町村に出向き手続きを行う必要があります。

さて、納税管理人についての疑問点は解消されたでしょうか?納税地の判定など不明な点がある場合は、税務署や最寄りの市区町村にたずねるのがいいでしょう。案外丁寧にアドバイスをもらえるはずです。なお不動産所得がある方は、非居住者の不動産所得(源泉所得税)についての解説もご参照ください。

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