外国人を雇用する際の税金 ~非居住者へ給料を支払う場合の源泉徴収~

外国人の従業員を雇用することは、昨今ではあたりまえのことになってきています。少子高齢化が進んでいく日本においては、外国人の労働力は今後も欠かせないものになっていくことでしょう。今回は、所得税法上「非居住者」に区分される人に給料を支払う場合に、税金はどうなるのかについて、解説いたします。

非居住者に該当する従業員とは?

所得税の納税義務を考えるにあたって、まず「居住者」・「非居住者」のどちらに該当するかを考えることが、最初のステップになることは前に述べたとおりです。日本国内で就労するために来日する外国人は、就労ビザの発給を受けた場合、原則として入国後すぐに居住者と推定されます。ただし、雇用契約期間が1年に満たないなど、日本滞在期間が1年未満であることが明白な場合には、非居住者と判断されます。従って、例えばワーキングホリデーで来日した外国人が働く場合、ワーキングホリデー査証で日本に滞在できる期間は1年間のため、通常は非居住者として扱われることとなります。

では、下記のような例の場合、Aさんは居住者と非居住者のどちらに該当するでしょうか?

Aさんは、英国に本社があるX社より日本子会社のY社へ、任期2年間の出向契約で昨年の7月に来日しました。しかし、本国に住んでいる両親の体調がすぐれず、予定を変更し本年の3月に英国本社へ戻ることになりました。Aさんの居住形態はどのように判定されるでしょうか?

Answer
日本国内で就労するために来日する外国人は、就労ビザの発給を受けた場合、原則として入国後すぐに居住者と推定されます。Aさんの場合、当初の出向契約は2年間であり、「日本滞在期間が1年未満であることが明白な場合」には該当せず、入国の日から出国の日までは居住者と判断されることになります。出国の日の翌日からは、非居住者に該当することとなります。

すなわち、途中で予定が変更になり結果的に日本での滞在期間が1年未満になったとしても、さかのぼって居住形態を修正することにはならないという点がポイントになります。

非居住者の課税所得の範囲とは?

非居住者が日本で所得税をおさめる所得の範囲は、国内源泉所得(日本で生じた所得)に限られることとされています。すなわち、非居住者であれば、海外で保有する不動産の賃貸料や、海外預金利子・配当などに関しては、課税所得に含めなくてよいということになります。また留意が必要な点として、「国内源泉所得に係る対価の支払地は、国内・海外のいずれであるかを問わない」ということがあります。つまり、日本で行う勤務に関する給料の支払が、例えば海外の親会社から直接行われていたとしても、その給料について日本で税金を納める義務があるということなのです。

例えば、以下のようなケースを考えてみましょう。

非居住者に該当するBさんは、オーストラリアの親会社X社(日本支店はない)から、任期6ヶ月で日本の子会社Y社に派遣され、勤務しています。Bさんの給料については、X社からBさんの海外口座に直接支払いがなされています。さて、Bさんの所得税はどのようになるでしょうか?

Answer
Bさんは、先ほど述べたとおり国内源泉所得を有するため、その支払が海外で完結していたとしても、所得税を納税する義務があります。なおX社は日本に支店等の事業所を有していないため、Bさんの給与について源泉徴収義務を有する者がいません。従って、Bさんは出国する日までに、確定申告書を税務署に提出し、自身で税金を納付する義務があります。

なおこの場合で、もしX社が日本に支店等の事業所を有している場合には、「国内に恒久的施設」を有していると判定されるため、当該日本の事務所が源泉徴収義務者となります。(Bさんの給与は、国内において支払いがあったとみなされることとなります。)恒久的施設の概念については、少し長くなりますので、また別途解説させていただきます。

非居住者の税金に係る税率はどうなっているでしょうか?

非居住者の税金については、その所得の区分や恒久的施設の有無によって、課税方法や税率が異なります。さらに各国の租税条約を適用することで、税率が軽減されるケースもあります。ここでは、代表的なケースについてみていくこととします。

非居住者に支払われる際に源泉徴収される所得

・非居住者が受け取る給与:20.42%
(基本的には源泉徴収で課税関係は終了します。ただし上記の例のように、確定申告が必要なケースもあります。)

・内国法人から受け取る配当:15.315%-20.42%

・人的役務提供の対価(コンサルティングなど):20.42%

・不動産の賃貸料等:20.42%
(ただし不動産等の賃貸料で、自己又はその親族が住むために借りた個人から支払われるものについては、源泉徴収は不要です。)

なお、給料や配当は基本的に源泉徴収で課税関係が終了するため、他の国内源泉所得がないようであれば、改めて確定申告をする必要はありません。(居住者の場合も、サラリーマンが確定申告をするケースが限定されていましたね。)

例えば企業の人事担当の方が非居住者に給料を支払うケースでは、「一律20.42%」で源泉徴収を行って、税務署に源泉所得税をおさめれば問題ありません。(給料の額の大小に関わらず、一定の税率で税金を徴収することが、居住者の源泉徴収とは異なる点になります。例えば、居住者の場合で月5万円のみ支給する場合は源泉徴収の必要はありませんが、非居住者の場合は5万円×20.42%=10,210円を源泉徴収する必要があります。)

なお、給与以外にも事業所得や不動産所得などがある非居住者については、給与については源泉徴収されたのち、他の所得とあわせて確定申告を改めてご自身で行う必要があります。

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