非永住者の税金について徹底解説。国外源泉所得の送金・確定申告との関係は?

このページを読んでいただいているあなたは、日本で働くために来日した外国人の方、あるいは外国人を雇用しようとしている企業の担当者の方かもしれません。企業の担当者の方であれば、どうやら今度採用する方は「非永住者」に該当するみたいだけれど、源泉徴収や年末調整はどうすればいいのだろうか?とお悩みかもしれません。以下をお読みいただければ、非永住者の課税について疑問点をすっきりと解消していただくことができるでしょう。

非永住者の定義

居住者・非居住者の判定の記事で記載いたしましたが、所得税法上、納税義務者は「居住者」と「非居住者」の二種類に分けられています。そのうち「居住者」については、さらに二区分に分けられており、「永住者」と「非永住者」に分かれることとなります。それぞれの定義を要約すると、下記のとおりとなります。非永住者の税金について徹底解説。国外源泉所得の送金と確定申告との関係とは?


①永住者

非永住者以外の居住者を指します。

②非永住者

居住者のうち日本国籍がなく、かつ、過去10年以内の間に日本国内に住所又は居所を有する期間の合計が5年以下である個人を、非永住者といいます。

※なお、上記はいずれも「居住者」であり、あくまで日本国内に住所があるか、または現在まで引き続いて1年以上居所がある個人であることが前提となります。

例えば・・
下記のケースでは、Aさんは納税義務を判定するにあたってどのステータスに該当するでしょうか?

Aさん(オーストラリア籍)は、2015年3月に、アメリカに本社を置くX社から、X社の日本子会社のY社に任期3年の出向契約で入国した。Aさんは、2015年3月より前に日本に住所を有していたことはない。

この場合、第一ステップとして、まずAさんが「居住者」と「非居住者」のどちらに該当するかを考えます。Aさんは、日本子会社のY社で勤務するために入国しているため、住所を有することになりますので、まず「居住者」と判定されます。

次に第二ステップとして、Aさんが「永住者」と「非永住者」のどちらに該当するかを考えます。が非永住者に該当することとなります。Aさんは日本国籍がなく、かつ、過去10年以内の間に、日本国内に住所又は居所を有していた事実はありませんので、非永住者に該当することとなります。

非永住者の課税所得の範囲

次に、「永住者」と「非永住者」の課税所得の範囲について見てみましょう。

①永住者
所得が生じた場所が日本国内か海外であるかを問わず、その全ての所得に対して課税されます。すなわち、たとえ海外で生じた所得で日本に送金されていないものがあったとしても、永住者であれば、その所得についても日本での納税義務があるということになります。

②非永住者
まず、国内において生じた所得について課税されます。(これを「国内源泉所得」といいます。※2017年分以後は、「国外源泉所得以外の所得」と呼ばれます。)
また、海外で生じた所得、すなわち海外預貯金等の利子や、海外にある不動産の貸付・譲渡による収益など(「国外源泉所得」といいます。)で、日本国内において支払われたもの又は日本国内に送金されたものに対しても、課税されることとなります。

永住者に該当すると、その全世界の所得について課税されることとなりますが、非永住者の場合には、「国内での支払いまたは国内への送金」がポイントとなることがお分かりいただければと思います。

非永住者に対する源泉徴収義務と年末調整について

例えばあなたが企業の人事担当であるとして、今度採用する従業員が「非永住者」に該当するようである場合に、源泉徴収は他の日本人従業員と同じ手続きで行っていいのだろうか?と疑問をお持ちになるかもしれません。まずは、源泉徴収について簡単におさらいしてみましょう。

源泉徴収制度とは、給与などの支払者がその支払を行う際に、あらかじめ所得税などを差し引いて支給し、差し引いた分を本人に代わって国に納付する制度となります。サラリーマンであれば、毎月給与から税金が自動的に差し引かれていることでしょう。これは、会社がサラリーマン本人に代わって、国へ税金を納めてくれていることに他なりません。

それでは、外国人に給与を支払う場合も、同じように源泉徴収を行うのでしょうか?答えは、その給与が国内源泉所得(日本で働いて得た対価)である限り、他の日本人従業員と同様に、源泉徴収を行う必要があります。

ここでご留意いただきたいのは、差し引く源泉徴収税額についてです。前述したとおり、非永住者は「居住者」の範囲に含まれることとなりますので、あくまで居住者として(一般の社員と同様に「給与所得の源泉徴収税額表」の「甲欄」又は「乙欄」を使って)源泉徴収を行うことになります。

またご想像がつくかもしれませんが、非永住者は「居住者」ですので、年末調整も他の日本人社員と同様の手続きとなります。従業員が「給与所得者の扶養控除等申告書」を年末調整が行われる日までに提出しており、年末に在籍しているのであれば、年末調整の対象社員となります。なお、1年間に支払うべきことが確定した給与の総額が2,000万円を超える人は、年末調整の対象とはならず、ご自身で確定申告を行っていただくことになるのでご注意ください。

非永住者の所得税確定申告について

上述のとおり、非永住者に該当する方はあくまで「居住者」に該当するため、源泉徴収や年末調整も他の日本人社員と同様の手順となることは述べたとおりです。給与所得しか得ていないサラリーマンであれば、原則として確定申告をすることなく年末調整で課税関係は終了します。
なお非永住者の確定申告義務についても、居住者と同様の基準となりますので、おおまかなものを記載いたします。

給与所得者であっても、確定申告をする必要がある人

・給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
・1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
・2か所以上から給与の支払を受けている人で、主たる給与以外の給与の収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
・源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人

従って、例えば非永住者のサラリーマンが、海外に保有する不動産の賃貸収入100万円を日本に送金している場合は、その所得を確定申告する必要があるということです。非永住者が確定申告を行う際に適用される所得控除は、基本的に居住者と同様となりますが、下記の点にご留意ください。

非永住者の確定申告における、所得控除の留意点

・医療費控除
医療費は病気やケガの治療目的で病院等に支払ったものであり、日本国内外を問いません。ただし、確定申告で領収書を添付(etaxで提出する場合には保管)しなければなりません。

・社会保険料控除
控除の対象となる保険は、日本の法律に基づいて支払う保険料等に限定されているため、同種のものであっても外国の社会保険料は対象となりません。(なおフランスのみ、租税条約の規定により母国で支払う年金保険料を日本の確定申告で社会保険料控除の対象にすることが認められています。)

・生命保険料控除
外国の生命保険会社と外国において契約締結した生命保険料は控除の対象にはなりません。

・地震保険料控除
外国の保険会社と外国において契約締結した地震保険料は控除の対象とはなりません。