税金でお困りの人事担当者必見!外国人を雇用する際に考えるべき3つのポイント

4月に入り、新入社員や中途採用者を新たに雇うことになる企業も多いことでしょう。空前の売り手市場と言われるなか、企業の人材獲得競争はますます激しくなってきています。その中でも、優秀な外国人の採用に動き出している会社も多いのではないでしょうか。今後、あらゆる業界において外国人労働者の重要性は増していく一方でしょう。いくら人口知能などの技術が発達したとしても、対面のサービスが必要とされる仕事はなくならないからです。

さて、この記事をお読みいただいているあなたは「外国人を採用したのだけど、税金の取り扱いはどうしたらいいの?」とお困りかもしれません。以下のポイントを把握して、外国人の税金についてもミスのない手続きをすすめていきましょう。

採用した外国人の方のビザと雇用契約をまず確認しましょう

新たに外国人を採用した企業のなかでも、その外国人の在留資格の内容はそれぞれでしょう。就労系の在留資格については、在留資格の種類によってできる活動とできない活動があります。

ビザ(在留資格)は在留の目的、外国人の地位に応じてそれぞれ分類されています。永住者ビザ、日本人の配偶者等ビザ、永住者等の配偶者ビザ、定住者ビザについては活動の制限がない在留資格となります。一方でそれ以外のビザ(経営ビザ、技術人文ビザ、技能ビザ、企業内転勤ビザなど)については、外国人の日本における活動内容に着目し許可されるビザであり、日本での活動も、原則として在留目的の活動に限定されます。すなわち、就労活動においては、就労が予定されたビザの範囲内でのみ認められるということになります。

したがって、外国人労働者を採用するに当たっては、パスポートやビザは確実に控えを保管し、「在留資格」「在留期間」を確認しておくことがとても重要です。特に「在留資格」については、就労活動が認められる在留資格がどうかをきちんと確認する必要があり、ビザで認められた期間での雇用契約がきちんと締結されているかについても留意しましょう。(仮に不法就労となってしまった場合の解説については、こちらの記事もご参照ください。)

ビザと雇用契約を確認することの重要性は、採用した外国人の税金の取り扱いに深く結びついてきます。さて次項において、外国人の税金の取り扱いを見てみましょう。

採用した外国人は、居住者と非居住者のどちらに該当しますか?

さて、晴れて就労可能なビザを保有する外国人を採用し、業務を開始したとしましょう。まず彼らのために行う手続きとして、社会保険や税金をどうすればいいのかとお悩みの担当者の方もいらっしゃることでしょう。

まず社会保険(年金・健康保険)については、外国人を採用した事業所が社会保険の適用事業所であれば、使用者はその外国人についても日本人と同様に、社会保険に加入させる義務があります。任意加入ではありませんので、あくまで日本人を採用した場合と同様に各種手続きを行いましょう。

次に税金についてですが、第一ステップとして、その外国人が居住者と非居住者のどちらに該当するかを判断しましょう。

日本の所得税法では、納税義務や納税額を考える際、「居住者」と「非居住者」のどちらに該当するかということが、とても重要なポイントになります。これは国籍で一律に区分できるものではなく、あくまで各人の置かれた状況で判断します。では、居住者と非居住者の原則的な定義を見てみましょう。

居住者とは
国内に住所を有し、または現在まで引き続き1年以上居所を有する個人を指します。

非居住者とは
居住者以外の個人を指します。

さて勘のいい方は、上述のビザや雇用契約の内容が、この居住者・非居住者の判定に関係してくるのではないか?とお気づきになったのではないでしょうか。

例えば、企業と締結した雇用契約が1年を超えているようであれば、その外国人は居住者と判定されます。逆に、ビザの在留期間と雇用契約の期間が1年未満であるケースでは、非居住者と判定されることになるでしょう。

ではビザと居住形態の関係はどうなっているのでしょうか?結論としては、ビザの在留期間は判断の参考にはなるものの、それだけで居住形態を決定することはできません。すなわち、例えば6ヶ月の期間のビザを所有している場合であっても、ビザの更新を行うことで日本での滞在期間を実質的に延長することは可能です。したがって、ビザの在留期間だけで居住形態を決定するのではなく、その外国人の職業・雇用契約期間・居所・家族の状況を総合的に勘案して決定していく必要があるということなのです。

~具体例~
当初6ヶ月の期間のビザで入国した外国人が、ビザの更新を行う前提で会社と3年の雇用契約を締結しました。この外国人は、居住者と非居住者のどちらに該当するのでしょうか?

Answer
入国した日から居住者と判定されることになります。

なお居住者・非居住者の判定については、こちらの記事で詳しく解説しておりますので、ご参考にしていただければ幸いです。

採用した外国人へ給料を支払う際は、源泉徴収に留意しましょう

さて、上記の記事をお読みいただいて、無事に採用した外国人の居住形態を決定できたとしましょう。外国人が提供する労働の対価として、毎月お給料を支払っているのが一般的なケースかと思いますが(実習生のケースについてはこちら)、その際に徴収する税金についてはどうなるでしょうか。

結論としては、外国人がどの居住形態に該当したとしても、採用した企業はお給料を支払う際に、源泉徴収義務者として所得税の天引きを行う必要があります。では、具体的に居住者のケースと非居住者のケースに分けて、詳しい内容を見ていくことにしましょう。

①居住者に対する源泉徴収

このケースについては、他の日本人社員へ給料を支給する場合と全く一緒です。居住者として「給与所得の源泉徴収税額表」の「甲欄」又は「乙欄」を使って源泉徴収を行うことになります。

またご想像がつくかもしれませんが、年末調整も他の日本人社員と同様の手続きとなります。従業員が「給与所得者の扶養控除等申告書」を年末調整が行われる日までに提出しており、年末に在籍しているのであれば、年末調整の対象社員となります(なお、1年間に支払うべきことが確定した給与の総額が2,000万円を超える人は、年末調整の対象とはならず、ご自身で確定申告を行っていただくことになるのでご注意ください)。

なお補足として、新たに来日した外国人を居住者として採用したケースでは、彼らは居住者の中でも非永住者というステータスに区分されることが一般的です。詳しくは、非永住者の源泉徴収・確定申告の解説もご参照ください。

②非居住者に対する源泉徴収

企業が非居住者に給料を支払うケースについては、「一律20.42%」で源泉徴収を行い、税務署に源泉所得税をおさめる必要があります。

これに関しましては、給料の額に関わらず一定の税率で税金を徴収することが、居住者の源泉徴収とは異なる点になります。例えば、甲欄居住者の場合で月5万円のお給料を支給する場合は源泉徴収の必要はありませんが、これが非居住者の場合は5万円×20.42%=10,210円を源泉徴収する必要があるということになります。

非居住者から源泉徴収をした所得税を納付する際は、居住者から源泉徴収した金額とは別に、「非居住者・外国法人の所得についての所得税徴収高計算書」という納付書を使用し、最寄りの金融機関で税金を納付することとなります。詳しい記載内容については、国税庁のページに解説がありますのでご確認ください

なお給与以外に事業所得や不動産所得などがある非居住者については、給与については源泉徴収されたのち、他の所得とあわせて確定申告を改めて行う必要があります。また非居住者に関しては、年末調整を行うこともありませんので、ご留意ください。

源泉徴収税額の計算については、今はクラウドの給与計算ソフトを使うのが主流となってきています。おすすめは会計ソフトで有名なfreeeですが、いくつか試してみてご自身に合うソフトを探してみましょう。無料でお試しから始められる【人事労務freee】

さて、ここまでお読みいただいて外国人を採用する場合の税金に関する疑問は解決できましたでしょうか?日本人とは違い、外国人の税金に関する取り扱いはケースバイケースとなってきます。不明点は管轄の税務署にたずねるのも一案となるでしょう。

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