外国人(非居住者)が、日本で不動産投資を行う場合の税金のポイント

グローバル化が進む昨今では、欧米のほかアジア圏からも、日本の不動産に対する投資が増えてきています。日本に居住していない投資家の方が、不動産投資を行った場合、日本での税金はどのようになるのでしょうか?せっかく投資をしても、税金が高すぎるようだと、良いパフォーマンスを残していくことができません。以下をお読みいただいて、あなたの投資判断の材料としていただければと思います。

非居住者が日本で不動産を保有する場合の課税所得の範囲

今回は、投資家の方が非居住者であるという前提で解説をしていきます。(居住者・非居住者の判定についてはこちら。)非居住者の場合は、日本国内で生じた所得(国内源泉所得)がある場合にのみ、課税されることとなります。例えば海外に住んでいながら日本の不動産を売却する、あるいは国内に所有する不動産を賃貸する場合がこれにあたります。

原則として、非居住者の不動産売却に係る所得や賃貸収入については、非居住者の申告漏れを防ぐという意味あいで、その売買代金や賃料の支払者が、一定の金額を源泉徴収したうえで、税務署に納付する制度となっています。その税率は、賃貸料については20.42%、売却対価については10.21%となっています。

なお、一定の場合には、下記のとおり源泉徴収を行わなくてもいいことになっています。

①不動産賃貸の場合

賃借人が個人の場合で、その方が自分や親族の居住のために非居住者から不動産を借りる場合には、その個人は源泉徴収をしなくてもよいことになっています。

②不動産売却の場合
不動産を取得した方が個人の場合で、自分や親族の居住のために非居住者から土地等を購入したケースでは、その土地等の譲渡対価が1億円以下であれば、その個人は源泉徴収をしなくてもよいことになっています。

例えばサラリーマンの方でも、非居住者から1億円を超える土地・建物などの譲渡対価を支払う場合には、原則として源泉徴収義務者に該当することとなります。

もちろん賃借人が法人の場合には、法人側で源泉徴収義務が生じることとなります。もし法人が源泉徴収を行わずに賃貸料や売却代金を満額で支払った場合には、後日税務調査で源泉税の不納付が見つかる可能性があります。その場合は、不納付加算税や延滞税の支払いまで必要となりますので、十分にご留意いただきたいポイントになります。

不動産を保有する非居住者は、確定申告を行う必要があるのでしょうか?

非居住者が国内に保有する不動産を貸し付けた場合、その生じる所得は国内源泉所得に該当するため、賃貸料収入について20.42%で源泉徴収されたうえで、総合課税の方法により確定申告を行う義務があります。

これの意味するところですが、例えば保有する不動産について多額の修繕が発生した年については、賃貸料収入よりも必要経費のほうが上回る場合もでてくるでしょう。その場合、損失がでている不動産所得について確定申告を行うことにより、20.42%で源泉徴収された賃貸料収入は、全額還付されることになるのです。もちろん、減価償却費や固定資産税も必要経費に含まれてくることとなります。

売却の場合も同様です。10.21%で源泉徴収された所得税は、総合課税の方法により確定申告を行うことで、最終的に精算が行われることとなります。譲渡所得の詳しい算定方法については、長くなりますので、また別途解説することといたします。

なお非居住者の不動産所得の確定申告にあたっては、所得控除が限定されている点に留意が必要です(基礎控除・雑損控除・寄付金控除の三種類のみ)。また居住者の場合と同様、届出を出していれば青色申告を行うことももちろん可能です。

非居住者の方は、確定申告のたびに日本に来るということは現実的ではないでしょう。一般的には、日本に親族や税理士などの納税管理人をおいて、その方に確定申告を依頼するというのが通常の流れとなります。

不動産を保有する非居住者の、住民税はどうなりますか?~所得割と均等割~

住民税は、所得に対して課される所得割と、所得の有無に関係なく課される均等割の2つで構成されています。

①所得割の取り扱い
住民税の所得割は、賦課期日である1月1日現在において、日本国内に住所を有する個人に対して賦課されます。従って、海外に住所を有する非居住者については、不動産所得や譲渡所得に対する住民税の所得割は発生しないことになります。

②均等割の取扱い
住民税の均等割は、賦課期日において日本国内に住所を有しない場合でも、日本国内に自己の居住目的で別荘などの家屋敷を所有していれば賦課されます。他人へ貸し付ける目的で所有している住宅については、対象外となります。

非居住者の不動産に係る固定資産税の滞納に注意!納税管理人をたてましょう。

固定資産税は、所有者の居住形態にかかわらず課税されるため、例え非居住者であっても居住者と同様に納税する義務があります。固定資産税は、賦課期日である1月1日現在の不動産の所有者に対して、賦課されます。身近な例でいうと、1年以上の任期で海外赴任をするサラリーマンで、家族も一緒に渡航するような場合、国内に残してある自宅にかかる固定資産税を、どなたかに納めてもらう必要があるのです。

所得税と同様ですが、ご自分で納税を行うことができない場合、あらかじめ納税管理人を指定したうえで、納税を依頼する必要があります。納税管理人を定めたときは、保有する不動産の所在地を管轄する市区町村に、「納税管理人届出書」を提出することになります。なお、所得税は国税であるため税務署が管轄となりますが、固定資産税は地方税となります。従って、不動産の所在地を管轄する市区町村に提出する必要がありますので、ご留意ください。(東京都主税局では、納税管理人の案内を英語で行っております。

さて、納税管理者の指定を怠っているとどうなるでしょうか?その場合、固定資産税の納税ができないため、購入した不動産が差し押さえとなってしまう可能性もあります。固定資産税については、納税管理人が選任されている場合はその納税管理人に請求されることになりますが、場合によってはその納税管理人が納税できないケースもあるでしょう。その場合は、その納税管理人の財産ではなく、納税管理人を選任した非居住者の日本国内に所在する財産が、差し押さえの対象となります。ただし、差押書等は、納税管理人に送達すれば足りることとされています。

納税管理人は、「申告や滞納処分に関するものを除き納税に関する一切の事項を処理する者」ですが、納税義務を負うものではありません。納税管理人の選任を依頼された場合、納税義務を負うわけではありませんが、不要なトラブルを避けるためにも万が一の場合を想定しておくことをおすすめいたします。

海外が関係する税務は比較的複雑となってくるため、専門家に聞いて見るのは1つの選択肢となるでしょう。その場合、比較的こういった分野に詳しい税理士に依頼するのが懸命です。最近では、海外居住の方や、スポットでも請け負ってくれる税理士も増えておりますので、下記のようなサイトで探してみることをおすすめします。

【税理士の探し方】
おすすめは弁護士紹介でも有名なこちらです。大手なので、希望に沿った税理士を見つけやすいと思います。また質問コーナーが充実していますので、類似の疑問を持つ人の質問を捜してみましょう。税理士ドットコム

また、こちらでも税理士を見つけることができます。充実したラインナップとなっています。